○匝瑳市横芝光町消防組合安全管理要綱

平成15年9月1日

消防本部訓令第5号

(趣旨)

第1条 匝瑳市横芝光町消防組合警防規程(平成25年訓令第1号)及び匝瑳市横芝光町消防組合消防安全管理規程(昭和58年消防本部訓令第4号)に基づき、消防活動等及び訓練、演習時その他の警防業務における安全管理の基準について必要な事項を定める。

(安全管理体制の基本)

第2条 消防活動等における安全管理体制の基本的事項について、次のとおり定める。

(1) 消防活動等における安全管理の主体は、各級指揮者及び隊員とする。

(2) 警防本部長又は大隊長は、必要と認める場合は、指揮者又は部隊を指定して安全管理の任務に当らせるものとする。

(3) 活動隊員は、指揮統制のもと隊員相互に連携するとともに、安全器具を有効に活用し、安全の確保に努めるものとする。

(安全確保の10則)

第3条 安全確保の基本的事項について、次のとおり定める。

(1) 安全管理は、任務行動を前提とする積極的行動対策であること。

(2) 災害現場は、常に危険性が潜在する。安易に慣れることなく危険性に対する警戒心を弛めないこと。

(3) 部隊及び隊員が指揮者の掌握から離脱することは、重大な事故につながる。独断的行動を慎み積極的に指揮者の掌握下に入ること。

(4) 危険に関する情報は、現場の全隊員に迅速に徹底すること。危険を察知した者は、直ちに指揮本部に報告し、緊急の場合は周囲に知らせて危害を防止すること。

(5) 興奮、狼狽は事故の土壌になる。どんな活動環境においても冷静さを失わないこと。

(6) 機械及び装備に対する知識の欠如は、事故を誘因する。各種資器材の機能、性能限界を明確に把握し、安全操作に習熟すること。

(7) 安全確保の基本は、自己防衛である。自己の安全は、まず自身が確保すること。

(8) 安全確保の第一歩は、防火着装に始まる。完全な着装を常に心がけること。

(9) 安全確保の前提は、強じんな気力、体力にある。平素から激動に堪え得る気力、体力と体調を持続すること。

(10) 事故事例は、かけがえのない教訓である。内容を詳細に把握し、行動指針として活かすこと。

(行動別安全基準)

第4条 消防活動時における安全管理について、次のとおり行動別に定める。

1 出動準備

(1) 執務中

ア 防火衣、防火帽、手袋、警笛、携行ロープ、安全帯等の個人装備は必ず機能の点検をする。

イ 車上における点検、三連はしごの点検等、資器材を点検する場合は、状況に応じて保安帽を着装する。

ウ 積載器材の点検は、必ず機能についても確認する。また、点検終了後は、車両のドア、ポケット等の閉鎖を確認する。

エ 指令内容は、確実に聴取し、落ち着いた行動をとる。

オ 事務室内は、出動に備え、常に整理・整頓に心がける。

カ 車庫内の床の水溜り等、転倒につながる危険要因は排除する。

キ 降雪時は、早めにタイヤチェーンを巻き、スリップ防止を行う。

(2) 仮眠中

ア 起床後は、靴を完全に履いてから行動する。

イ 寝室内等では、周囲の隊員と接触しないよう注意するとともに、二段ベッドの場合は、はしご段を一段ごと確実に降りる。

(3) 車両乗車まで

ア 階段は、飛び降り等の省略行為はせずに、一段ごと確実に降り、足元だけでなく頭上にも十分配意する。

イ 指令番地等の地図による確認は、止まって落ち着いた状態で実施する。

ウ 車庫内での行動は、すべり、段差による転倒やみぞ等に足をとられないように十分に注意する。

エ 出動時は、車両が動いていなくても、原則として出場車両の前は、横切らない。

オ 防火衣等は、他の隊員との適正な間隔をとって完全に着装する。

カ 車両のドアは、周囲を確認した後開放する。

キ 車輪止めは、乗車前にはずし安全な位置に置く。

ク 乗車は、ステップを確実に使用して乗車する。

2 出動

(1) 発進

ア 出動時には、原則として誘導員(残留勤務員)を出す。

イ 誘導員は、自らの安全を確認し誘導する。特に夜間の誘導時は、他の走行車両、歩行者等に注意する。

ウ 指揮者は、全員乗車を再確認し、サイレンを鳴動させ、発進順位に従い発進させる。

(2) 走行中

ア 赤信号は一時停止又は最徐行し、確認呼称を励行するなど乗車員全員が一体となり、事故防止に努める。

イ 2車線以上の幅員のある道路が交差する赤信号を通過する場合は、各車線の前ごとに一時停止又は最徐行し、安全を確認して通過する。

ウ 相手車両等に対して、車載拡声器を積極的に活用し、車両、歩行者に注意を呼びかける。特に駐停車車両の陰から飛び出す自転車、歩行者等に注意して通過する。

エ 先行する車両は、後続車がある場合、拡声器で一般車両に後続車があることを知らせる。また、後続車は前車との安全間隔を十分にとる。

オ 優先通行権は過信せず、一般車両から聞こえない、見えないものと判断して通行する。

カ 災害出動は、交差点、丁字路での緊急車両同士の衝突に十分注意する。

キ 走行中は、火煙認知、無線情報に気をとられがちとなるが、前方注意等を怠ることなく走行に集中する。

ク 寒冷時は、特に路面凍結によるスリップに十分注意する。

3 現場到着

(1) 機関員は、停車することを事前に隊員等に周知するとともに急停車はできるだけ避ける。部署後、速やかに車輪止めをかける。

(2) 車両のドアは、前後の状況を確認後、開放し、下車後は必ずドアを閉めておく。

(3) 下車は、指揮者の指示で行う。またステップを活用し、地盤の状況等を確認後下車する。

(4) 車両の誘導員は、自らの安全を確認し、周囲に注意を払い任務に当たる。

(5) 車両後退時の誘導は、機関員の死角を補うとともに、車両の真後ろでなく、機関員が確認できる位置で行う。

(6) 部署時は、各行動が競合し、隊員同士の衝突や資器材等への接触が考えられるので、各隊員は視野を広く持つとともに声を掛け合い、安全の確保に努める。

(7) 特殊車は、人工地盤及び架線状況に十分注意して部署する。

(8) 降雨時、降雪時及び路面凍結時は、傾斜地や路面は滑りやすくなっているので、現場到着時の行動に十分注意する。

4 災害現場周辺の活動

(1) 狭い路地の交差点では、他の隊員や歩行者の動きに配意し、左右を確認しながら、機敏な行動により衝突を防止する。

(2) 不整地、暗所は、足元に十分注意を払い、つまづき等による転倒防止に心がける。

(3) 情報収集や連絡等の屋外活動は、状況によって、防火帽のしころを上げるなど周囲の状況を確認しやすい状況をとる。

(4) 活動現場周囲においては、正面の事象に注意力が傾注しがちであるので、頭上を確認してから行動するとともに周囲の状況や他隊との連携に配意して活動する。

(5) ごみ箱や植木棚等の工作物を足場として活用する場合は、必ず強度及び安定度を確認してから行う。

(6) 煙等で視界の悪い階段を昇降する場合は、照明器具を活用するとともに、一段一段確かめて体重をかける。

5 活動終了(資器材の撤収)から帰署まで

(1) 活動終了後は、疲労や緊張のゆるみにより注意力が散漫となるため、隊員同士で声を掛け合い、注意心を喚起する。

(2) 高所から資器材を降ろすときは、上下の隊員が連携をとり、お互いに確認呼称をしながら、ロープ等を使用して静かに降ろす。

(3) 重量物を持ち上げるときは、膝を曲げ、十分に腰をおとして、背筋を伸ばし、ゆっくり行う。

(4) 車両のステップは、水で濡れている場合があるので、滑り、踏みはずしに注意し、取手を確実に握って静かに乗車する。

(5) 車両の誘導員は、他の隊員の動向に配意し、警笛等を活用して明確に誘導する。

(6) 下車するときは、飛び降りることなく、足元に十分注意し静かに降りる。

(7) 降雪時、雪のついた長靴等の底は、滑りやすくなっているので、帰署(所)後、車庫内等における転倒防止には、十分注意する。

(8) 帰署後、再出動に備え、資器材、個人装備の点検整備を確実に行うとともに、指揮者は隊員の怪我の有無、体調等を必ず確認する。

(9) 資器材を積み替える場合は、必ず保安帽、手袋を着装するとともに隊員相互の連携を密にし、特に重量物は、無理をせず複数の隊員で声を掛け合って行う。

6 警防調査

(1) 小隊による水利等の調査は、小隊長の指揮のもと隊員が連携し、交通並びに作業所周囲の危険要因を排除して行う。

(2) 車両の停車位置は、作業の安全が確保できる位置とし、作業の実施にあたっては、必ず監視員をおき、安全を図る。

(3) 消火栓のふたの開放は、腰をおとして背筋を伸ばして行い、防火水そうやマンホールのふたは、持ち上げずに手前に引いて開放する。

(4) 消火栓等のふたの開放後は、足元に注意し、鉄ぶたと枠の間に手足を挟まれないようにする。

(5) 消火栓の鉄ぶたの足での閉鎖は、足をとられての転倒やふたの破損による受傷危険につながるので行わない。

7 その他の作業等

(1) 作業等は、指揮者の明確な任務分担と指揮により、隊員相互に声を掛け合い、協力して実施する。

(2) 作業実施においては、作業に適した服装、装備とし、状況に応じてヘルメットを着装する。

(3) 高所の作業においては、必ず命綱をつける。

(4) 作業の開始、終了は、けじめをつけて行う。

(火災現場の活動別安全基準)

第5条 火災現場における安全管理について、次のとおり活動別に定める。

1 水利部署

(1) 水利誘導時等

ア 水利へ車両を誘導するときは、水利の位置及び停車位置を明確に示すとともにホース等の障害物を排除して行う。

イ 水利部署時は、吸水処置、ホース延長、はしご搬送等の行動が競合するので、隊員同士の衝突に注意する。

ウ 寒冷時は、特に路面凍結による転倒、車両のスリップに注意する。

(2) 吸管操作時

ア 吸管延長時は、吸管のはね返りやつまづきに注意し、消火栓等に結合した後、開弁前に必ず緊結状態を確認する。

イ 消火栓、防火水槽等の位置は、吸管れき断防止器、事故防止灯、ロープ等で標示し、転倒防止措置をとる。

(3) 消火栓・防火水槽使用時

ア 防火水槽、消火栓の蓋は、腰部の受傷を防ぐため、安定した姿勢で開放するとともに、手足のはさまれに十分に注意する。

イ スピンドルドライバーは、吸管を離脱するまで抜かない。

(4) 河川等自然水利使用時

ア 塀越しに水利がある場合は、はしご等を活用し、原則として2名以上で行う。

イ 転落危険のある水利では、ロープ等で身体を確保し、吸管投入等の作業を行う。

2 ホース延長

(1) 共通事項

ア 放口へのホースの結合は、余裕ホースを十分にとり、ホースの結合状況を必ず確認する。

イ 見通しの悪い場所、道路の交差する場所を延長する場合は、避難者に警笛等で注意を呼びかける。

ウ 強風時、風下側からホースを延長するときは、火の粉、ゴミ等が飛散してくるので、防火帽の顔面保護板等を活用し、眼、顔を保護する。

エ 軌道下のホース溝を使用して延長するときは、電車の確認要員を指定する。指定された者は、防火帽のしころを上げ、視界等を十分確保する。やむなく軌道上をホース延長した時は、速やかに軌道関係者に連絡し、係員の現場派遣を要請する。

オ 交通頻繁な道路を横断するときやホースブリッジを設定する時は、複数で行い、1名は通行車両の規制に当たり、安全を確保する。

(2) ホースカー使用時

ア ホースカー下車は、必ず後方を確認し、隊員同士が一致協力して行う。

イ ホースカー保持者は、確実にブレーキを握り、落下防止等の措置をとる。また、傾斜地では、予想以上の力が加わることを考慮して行動する。

ウ 使用後のテールゲートは、速やかに収納してつまづき等を防止する。

エ ホースカーえい行操作中は、前方、左右、足元をよく視認し、常時ブレーキ操作のできる体勢とし、特に後部補助者は、管そう及び結合金具の落下に注意する。

オ 動力ホースカー走行中の急ブレーキ、急ハンドルは、転倒等の危険があるので行わない。

カ 現場において動力ホースカーから離れる場合は、駐車ブレーキを確実にロックし、ストップスイッチを切るとともに、メインスイッチがキー式のものについては、必要によりキーを抜く。

キ ホースカーは、活動の障害とならない場所に置き、傾斜地に置くときは、車輪止め等の措置をとる。

(3) 手びろめ延長時

ア 手びろめ延長、結合金具、管そうの落下、ホースバンドのたれ下がり、ホースの巻付きに注意する。

イ ホースの延長は、落下物又は倒壊危険を予想して、できるだけ軒下、窓の下の付近を避ける。

ウ 塀等を乗り越えてホース延長する場合は、塀等の強度を確認するとともに、積載はしご等を活用して行う。

エ ホースのつり上げ、つり下げ延長は、上下階の連絡を密にし、途中階のガラス等の破損に注意する。

オ つり上げ・下げしたホースは、ロープ等で支持、固定する。

カ 屋根上でのホース延長は、棟上を蛇行させ落下防止し、筒先員は棟を跨いで腰を落として反動力により転落しないよう注意する。

キ 増加ホースの搬送は、結合金具を握って搬送する。

ク ホース延長は、余裕ホースを多めにとり、ホースの引っかけによる積載はしご等の転倒に注意する。

ケ ホースの屈曲を直すときは、ホースのはね上がり、屈曲部への指等のはさまれに注意する。

3 送水

(1) 放口コックは、急激に開放しない。

(2) 予備送水は、機関員が確認できる範囲まで行うものとし、いつでも停止できる態勢で行う。

(3) はしご利用等、高所へホースを延長しているときは、見通しがよい場所であっても筒先が完全に部署するまで送水しない。

(4) 機関員は、筒先部署までに時間を要すると判断される場合又は筒先位置が確認できない場合は、伝令又は携帯無線による連絡を待って送水する。

(5) 送水前の筒先は、内部進入しないようにする。また、筒先は、送水前であっても絶対に放さない。

4 放水

(1) 放水時の姿勢は、反動力に備えて管そうを腰に密着させ、確実に保持し、腰を落として重心を低くする。また、状況により管そう固定金具を活用する等の措置をとる。

(2) 急激なノズルの開放は、反動力による転倒等の受傷につながるので、ノズルは徐々に開放する。また、分岐したホースの一方のノズルを停止する場合にあっても徐々に行う。

(3) 放水中のホースの上に乗らない。ホース結合部の上をまたがない。

(4) 対面する方向にいる筒先員等に注意し、対向注水を絶対しない。

(5) 放水時に面体を着装しない場合は、他隊の放水から顔面等を保護するため、防火帽の顔面保護板を活用する。

(6) 火炎に接近しての放水や濃煙熱気内で放水する場合は、呼吸保護器を着装し、必ず防火帽のしころ等により身体の露出部を覆うとともに、必要により援護注水を受ける。

(7) 建物内や狭い路地等で放水する場合は、常に周囲の延焼状況に配意し、退路を確保しておく。

(8) 屋内進入する時は、必ず屋根、天井等の上方部を放水圧で払ってから進入する。

(9) 後退を要する場合は、自己隊の後退により危険が生じるおそれのある他隊との連携を密にする。

5 濃煙内活動

(1) 濃煙内進入時は、進入管理者を必ず指定する。

(2) 進入管理者は、あらかじめ内部構造、進入目的、退出時間、連絡方法等を進入者に徹底する。

(3) 進入管理者は、隊員カード等により進入者を絶えず確認し、進入者を必要最小人員に統制する。

(4) 濃煙内は、照明を確保し、原則として援護注水態勢をとって進入する。

(5) 濃煙内進入には、完全な防火着装を行い、必ず呼吸保護器を着装する。面体を着装したならば脱出するまで面体を離脱しない。

(6) 進入体形は、最低2名1組で行い、退路確保のため、原則として確保ロープを使用し、確保員を配置する。

(7) 確保ロープを結着する場合は、支持物の強度を確認してから行う。

(8) 進入開始時は、ドア等開口部の熱気を確認し、姿勢を低くして、内部の状況等安全を確認しながら、開口部の正面に位置しない方法で開放する。

(9) 進入要領は、姿勢を低くし、手、足、とび口等で足元を確認しながら、壁伝いに侵入する。

(10) 進入中に面体がはずれた時は、片方の手で面体を顔に押し付け、他の一方の手で締め付けバンドを締め直す。もし、面体内に煙が入った場合は、手動補給弁を開放し、煙を速やかに出した後、締めつける。

(11) 進入後は、ボンベの残圧、時間経過、脱出経路を絶えず念頭におき、確保ロープ、ケミカルライト等を使用し、退路を確保する。

(12) 一酸化炭素ガスの堆積は、煙の濃度に関係なく、時間に比例するので煙の量のみで判断しない。煙が薄くなっても、安易に呼吸器の面体を離脱しない。

(13) 濃煙内進入時、次の兆候が現われた場合は、フラッシュオーバー等の発生危険が予測されるので注意する。

ア 建物から褐色や黄色味の帯びた濃煙が吹き出ている。また、開口部から煙や炎が間欠的に噴き出している。

イ 開口部開放後、噴出する煙が熱気を帯びており、また、煙の室内への強い吸い込みがあり、煙が渦巻くような状態になっている。

ウ 間欠的に窓から噴出する煙の息つぎが止み、静かに流れ出るような状況になっている。

エ 室内侵入時、床に這わなければならないほど、煙の温度が高くなっている。

オ 天井下の煙の中に間欠的に炎が現われる。

(14) 暗所や濃煙内での注水は、対面の進入隊員に配意しながら行う。

(15) 木造大規模建物火災は、天井裏の火炎伝送が早く、背後から急激に濃煙が襲うことがあるので、内部進入の各筒先は、相互に連絡を保ち、孤立防止を図る。

6 破壊活動

(1) 開口部を設定する場合は、空気流入による火勢拡大等の危険があるので、指揮本部の了解を得るとともに内部進入の各隊と連絡をとり、安全を確認して実施する。

(2) 破壊の実施にあたっては、開放時に吹き返しが予想されるので、破壊口の正面は、避けるとともに注水態勢を整えてから行う。

(3) ガラスを破壊する時は、防火帽の顔面保護板及びしころを活用し、ガラスの側面に位置して行う。大きなガラスは上部の角から破壊し、窓枠のガラス破片は完全に落とす。

(4) トタン板のはく離作業は、上部から順に行い、切創等に注意する。

(5) 大ハンマー、オノ、とび口等を使用する場合は、周囲に十分配意して行うとともに高所で使用する場合は、落下防止措置をとる。

(6) 有刺鉄線等の切断片は、不用意に捨てない。まとめて安全な場所に置く。

(7) 斧、掛矢、鳶口等の破壊器具は、平素から取付部のクサビ等のゆるみ等のないことを点検する。特に乾燥期は、水に浸してから使用する。

(8) 鳶口等の長尺もの又は刃先のあるものを搬送する時は、周囲の人に注意し、刃先は上方又は下方に向け、身体に密着させて携行する。

(9) エンジンカッター、チェンソー、斧等を使用し切断作業をする時、両足は均等に開き、切断線上に絶対に足を置かない。

7 残火処理活動

(1) 残火処理時は、疲労等により注意力が散漫になることから、活動各隊を統制して活動に当たらせる。

(2) 木造建物等の1、2階で作業する場合は、原則として上下で同時に活動させない。

(3) 瓦等を排除する場合は、活動隊に周知するとともに一時退避させてから実施する。

(4) 堆積物の上を歩く場合は、釘等鋭利なものによる踏み抜きに十分注意する。

(5) 注水された焼損物は、水分を含み重量が増加しているので、搬出する場合は、腰部の受傷等に注意する。

(火災現場の危険要素別安全基準)

第6条 火災現場における安全管理について、次のとおり危険要素別に定める。

1 落下物危険

(1) 屋内進入時及び行動中は、まず上部を確認し、瓦等落ちやすいものがあるときは、声を掛け周囲の隊員に注意するとともに、とび口又はストレート注水で落とし、危険を排除する。

(2) 防火造建物は、モルタル壁裏側の燃え込みにより、壁体、軒裏のモルタルが落下するので、モルタルに亀裂、ふくらみが生じたら注意する。

(3) パラペットは、延焼が進行することで、一気に落下する危険があるので、十分注意する。

(4) 延焼建物に隣接する化粧モルタルやタイル仕上げの壁体は、熱せられることではく離落下するので注意する。

(5) コンクリー卜の内壁は、最盛期になると爆裂落下するので注意する。

(6) 柱、梁の組み込み部(ボルト締め部分等)が焼けているときは、倒壊、落下の危険があるので、梁の真下には絶対に部署しない。また、組込み部、軒げた等の接続部分には早期に注水し、落下危険を防止する。

(7) 建物内部が延焼しているときは、窓組込み式ルームクーラー及びエアコンの室外機、看板等が落下する危険があるので、真下の通行及び部署は避ける。

(8) 火点が壁に近いときは、初期の段階から壁体の落下、倒壊があるので注意する。

(9) 劇場、映画スタジオ、体育館等の天井には、照明装置、幕類、装飾品等のつり物が多いので、落下に注意する。

(10) 工場、倉庫の天井には、荷役機械、クレーン等があるので、落下に注意する。

(11) 事務所、共同住宅の窓ぎわ、ベランダには、植木鉢等が置いてあるので、落下に注意する。

(12) 柱上トランス火災では、溶融物の飛散落下があるので十分注意する。

(13) 社寺等の建築物は、屋根材が回廊部分に落下するので、回廊部分の通行又は部署は避ける。

(14) 公衆浴場は、軒が高く構造材が太いので、落下すると大事故につながりやすい。

(15) 高所作業は、使用する資器材等を落下させる危険があるので、危険範囲を明示して行動を規制する。

2 転落危険

(1) 積載はしごを登、降ていする場合は、横さんを確実に握り三点支持を保つとともに、資器材を持っての登、降ていは、原則として行わない。

(2) 積載はしご上で破壊等の作業を行う場合は、作業姿勢をとり、身体の安定を図るとともに、状況により命綱で身体確保をする。

(3) 送水後、積載はしごにより屋内進入等する場合は、ノズルを確実に閉め、進入時にノズルが開放しないよう十分注意する。

(4) はしご車のてい上作業は、命綱で転落防止を図るとともに、安定した姿勢で行う。

(5) 建物に設置されている点検用等の垂直はしごは、腐食している場合が多いので、強度を確認し登はんする。

(6) 高所作業は、支持物の強度、足場を確認するとともに命綱等で必ず身体を確保する。特に強風時には、姿勢を低くし身体の安定を図る。

(7) 窓等から建物内に進入するときは、床等の有無、足場の強度を確認する。

(8) 住宅等の窓に取付けてある落下防止枠は、引張り強度が弱いものがあるので、過信しない。

(9) 木造、防火造住宅は、床抜け、天井落下の危険があるので、部屋の中央部の部署は避け、部屋の隅、窓際等に部署する。

(10) 下屋、軒、物干し台等の工作物に乗るときは、その強度を確認する。

(11) スレート屋根、プラスチック屋根に止むを得ず登る場合は、厚板、積載はしご等で足場を確保し、更に命綱等で身体を保持する。

(12) 瓦屋根上に部署するときは、部署周りの瓦をはずし、瓦ざんを足場にする。また、屋根上での注水は、ホースを棟上で蛇行させて、ホースのずれ落ちを防止する。

(13) 屋根上にある採光用の塩化ビニール板、網入ガラス等並びに住宅等のサンルームの屋根上は、強度が弱いので登らない。

(14) 積雪、凍結時の屋根上又は急勾配のメタルルーフの屋根上に止むを得ず登る場合は、特に命綱等を活用し、転落防止を図る。

(15) アーケードの上は、色分けされている消火足場を歩く。足場以外で行動するときは、梁又はさん(ビス止め部分)の上を歩く。

(16) 染色、皮革、メッキ工場では、ソーダ槽、タンニン槽、塩酸槽、焼入れ炉等があるので、転落に注意する。

(17) 自走式駐車場には、ピッ卜、ふたのない油水分離槽、排水溝があるので注意する。

(18) 工場等には、荷物運搬用のリフト穴があるので注意する。

(19) 屋敷跡、空き家の敷地内には、古井戸等があるので注意する。旧家等の中には、建物内に掘りぬき井戸がある場合があるので注意する。

(20) 水槽、溝、穴等は、水が溜まることにより判別できなくなるので、ロープ等で危険の標示をする。

(21) ガス爆発した中高層住宅等の床、壁体、手すりは亀裂、破損等により強度が低下しているので過信してはならない。

3 転倒危険

(1) 呼吸保護器等の重装備を着装し、障害物等を越える場合は、足腰に思わぬ荷重がかかり、転倒することがあるので、足元を確認してゆっくり行動する。

(2) 長時間高圧注水を行う場合は、管そう固定金具の活用等により転倒防止を図る。

(3) デパート、ホテル等透明ガラス、鏡等のある場所は、錯覚しやすいので、特に進入時は注意する。

(4) 劇場、映画館等の床は、傾斜、段差があるので、滑り、つまずきに注意する。

(5) 機械室、ボイラー室等の床は、油がしみ滑りやすいので注意する。

(6) ホースは、踏み乗りせず、特に出入口、廊下、階段等のホースによるつまずきに十分注意する。

4 倒壊危険

(1) 倒壊が予想される区域は、ロープ等で明示し、危険事象を拡声器、携帯無線機等で全隊員に周知する。

(2) 柱、梁等に鉄骨を使用している建物は、熱に弱く、変形、座屈による倒壊危険があるので注意する。

(3) 石造、レンガ造の建物は、構造材に鉄筋等が使われていないため、一部が崩れると未燃部分まで一挙に崩壊する場合があるので注意する。

(4) 店舗等間口の広い建物は、梁が長く、間柱、間仕切壁等が少ないため、倒壊又は2階床の落下が早い場合があるので注意する。

(5) マーケット等は、外観だけでは老朽化等の判別が困難なものもあるので、倒壊等に注意する。

(6) 一般住宅の中には、主要構造部の接合を釘、かすがいだけで施工している場合があるため、倒壊、梁等の落下が早い場合があるので注意する。

(7) 倉庫は、荷くずれ危険(荷くずれは続けて起こりやすい。)があるので、退避できる安全距離を確保し行動する。

(8) 材木置き場では、木材のくずれ、倒壊に注意する。

(9) 公衆浴場等で古材を積み上げている場合は、崩壊に注意する。

5 爆発危険

(1) プロパンガス、都市ガス、メタンガス等が屋内に漏えい充満している場合は、室外の電源遮断と窓等(都市ガス、メタンガス等は上方開口部、プロパンガスは下方開口部)を開放し、ガスの拡散を図る。

(2) プロパンガス等可燃性ガスが漏えいしている場合は、風上、風横から進入し、状況により火災警戒区域及び爆発危険区域の設定を行い、火気使用の禁止措置を速やかに行う。

(3) アセチレン、エチレン等のボンベが加熱されている場合は、分解爆発が予想されるので、爆発による影響の受けない距離を考慮し、必要最小限の隊員以外接近させず、放水銃等を活用して冷却する。

(4) メタンガス、都市ガスが下水溝等地下に滞留しているおそれがある場合は、必ずマンホールの上部を避けて部署する。止むを得ず付近で活動する場合は、二次災害防止のため安全を確認し、至急マンホールのふたをとる。

(5) エーテル、二硫化炭素、ガソリン、アルコール類等の危険物は、非常に引火性が強く、速燃性があるので、火炎の伝送、輻射熱等を十分注意して行動する。

(6) ニトロセルロース、ビクリン酸は、加熱、衝撃等により爆発危険があるので、爆発による影響の受けない距離を考慮し、放水銃等を活用して冷却する。

(7) 酸素製造工場、酸素ボンベ充填所等で酸素ボンベが多量にある場合は、延焼が急激に進展するので、十分に注意して行動する。

(8) ナトリウム、カリウム、炭化カルシウム等の禁水性物質は、注水により可燃性ガスを発生し、爆発的に燃焼するので、絶対に注水はしない。

(9) アルミニウム粉、マグネシウム粉等の金属粉又は金属の切りくずが燃焼中の場合は、注水により可燃性ガスを発生し、爆発的に燃焼するので、絶対に注水はしない。

(10) 金属溶解炉への注水は、水蒸気爆発等により爆発的に燃焼するので、絶対に注水しない。

(11) 木粉、澱粉、小麦粉等が収容されている対象物は、粉じん爆発のおそれがあるので、爆発による影響の受けない距離を考慮し、噴霧注水する。

(12) セルロイド火災は、延焼力が極めて大きいので、火災の拡大に十分注意し行動する。

(13) メチルエチルケトンパーオキサイドは、加熱、衝撃等により分解爆発する危険があるので、爆発による影響の受けない距離を考慮するとともに、必要最小限の隊員のみで行動する。

(14) 船倉、ピット、マンホール等の閉塞箇所内に進入して行動する場合は、可燃性ガスの有無(ある場合はその濃度)を把握して、爆発等の二次災害を防止する。

(15) 倉庫火災は、収容物及び内装を確認するまで、内部進入しない。収容物が爆発物等である場合は、放水銃等により遠隔注水する。

6 感電危険

(1) 特別高圧(直流・交流とも7,000Vを超えるもの)又は高圧(交流600Vを超え7,000V以下、直流750Vをこえるもの)の変電設備の火災は、活線接近警報器等を活用するとともに、原則として、事業所の電気主任者又は東京電力の係員と行動をともにする。

(2) 停電事故の際は、東京電力変電所から自動的に再送電されるので、送電の完全停止を確認するまで施設には近づかない。

(3) 周辺の電線に触れるおそれのある活動をするときは、活線接近警報器等を活用するとともに電源の遮断を確認してから行動する。

(4) 通電中の高圧電線又は柱上変圧器等に注水する場合は、十分な安全距離を保つとともに噴霧注水とする。

(5) キュービクル式変電設備又は変電設備の火災は、扉の開放時に火炎で受傷する場合がある。扉を開放するときは、側面に位置する。

(6) 変電室火災又は変電室が浸水している場合は、電源遮断を確認してから進入、活動する。

(7) 屋内に設置されている油入変圧器の火災は、二酸化炭素、高発泡消火等により窒息消火を行う。(油温が発火点より下がるまでは、再発火の危険がある。)

(8) 電車火災では、パンタグラフの降下を確認してから行動する。

(9) 地下鉄火災では、運転指令所と連絡を密にし、電源遮断を確認してから行動する。

(10) 第三軌条のある地下鉄等の線路に降りるときは、第三軌条に近寄らない。

7 吹き返し危険

(1) 注水開始時は、濃煙、熱気の吹き返しがある。完全な防火着装をし、露出部をなくしてから注水する。

(2) 熱せられた壁体やシャッターへの注水は、熱気のはね返りがある。正面は、避けて注水する。

(3) 濃煙の噴出している開口部は、吹き返し危険があるので、はしご等の開口部正面部署は避ける。

(4) 排気側から注水するときは、吸気側に噴き出しがある。吸気側の活動隊と連絡を密にし、安全を確認して注水する。

(5) 染色、皮革、メッキ工場等にある各種薬品槽、焼き入れ炉等へは飛散、吹き返しがあるので、直接注水しない。

(救助活動現場の安全基準)

第7条 救助活動現場における安全管理について、次のとおり活動内容別に定める。

1 共通事項

(1) 共通

ア 出動に際しては、必要資器材を増載し、個人装備の完全着装を行い、覚知内容からの二次災害危険を予測する。

イ 現揚の確認は、地形、地物、被害施設物等から不安全状態を確認するとともに救助活動進行中に発生する危険を予測する。

ウ 活動は、活動エリアの確保に始まり、器材選定、任務分担と適正な現場管理による安全確保を講じた規律ある行動をとる。

エ 現場では、状況により関係者等から危険情報について意見、助書等を求め、必要な場合は、その措置を行わせるなど専門家の活用に配意する。

オ 傷者を扱う場合は、感染防止処置を実施した後、対応する。

カ 救助資器材の活用は、出火防止、性能限界等に十分配意して活動する。特に、火花を発する資器材を使用する場合は、放水態勢をとる等の消火準備を行うとともに、付近の可燃物等を除去して行う。

キ 高所における作業においては、必ず命綱をとる等の転落防止措置をする。

ク 支点、支持物は必ず強度を確認してから活用するとともに、努めて2箇所以上をとる。

ケ 安全器具、呼吸保護器は、取扱要領、諸元性能に応じた適正な使用を行う。

(2) 隊長

ア 隊員の行動は、確実に把握し、規律ある行動を行わせる。

イ 活動環境は、変化していくので、常に周囲の状況に配意する。

ウ 救助資器材等は、性能限界を十分に考慮するとともに性能の向上に比例して反動等の危険が大きくなっていることも認識して活動する。

エ 活動は、努めて二重の安全措置を考慮して行う。

オ 活動に長時間を要するときは、交代要員を確保する。

カ 危険な状況変化を察知した場合は、速やかに命令の変更、避難の指示を行う。

キ 安全器具、呼吸保護器は、取扱要領、諸元性能に応じた適正な使用を行う。

(3) 隊員

ア 行動は、常に隊長の指揮下で規律ある行動をとり、迅速のみにとらわれず、安全・確実に行う。

イ 進入は、脱出時の手順を考えて行う。

ウ 活動は、目先ばかりにとらわれることなく、常に周囲全般の状況に配意する。

エ 資器材の設定、操作は確認呼称しながら確実に行う。

オ 活動状況は、適宜呼応し報告する。

カ 活動中に異常を予知及び認知したときは、速やかに隊長に報告する。

キ 状況や下命内容が不明確なときは、活動を安易に開始、継続しない。

(4) 回転翼航空機の活用

ア 隊員搭乗時の機体への接近は、明確に手信号で合図を行い、操縦士等乗組員から視認可能なセーフティゾーン(機体正面の中央部を中心に左右45度の範囲)を通行する。

なお、ブレードの回転面内を通過する時は、頭を下げ低姿勢で風圧に注意するとともに長い物品や資器材の飛散に配意し機体に接近する。

イ 機内での確保設定要領は、機体床の強度を有するタイダウンリング(機体床面に取り付けられたリング型の支点)に普通カラビナをかけスリングを通して命綱を作成し、スリングに必要なカラビナを設定する。この際、普通カラビナとスリングベルトが確実に設定されているか確認する。

ウ 飛行検索時でスライディングドアを開放した場合は、風圧により搭載資器材の飛散、落下危険があるので確実に固定する。

エ ホイスト降下は、地上到着時、ホイストフックから身体を離脱した後、ホイストケーブルの巻付き危険があるので降下隊員は、フック及びワイヤーを両手で持ち、素早く整備士に巻取りの合図を送る。

オ ホイスト降下時は、静電気による感電防止対策として、ホイストフックを地上等に接地させてから、カラビナ等の離脱着を行い、隊員降下時においても降下途中の隊員には触れないことを原則とする。

カ 傷者等の搬送時は、救助、救急資器材等の落下防止措置を行うとともに、救助用担架を機内収容した場合は、直ちに落下防止措置を講ずる。

キ 飛行中の機体は常に水平位でなく、傾いた態勢となることから、状況に応じた担架の位置、体位管理に十分注意する。

ク 不整地での救助は、地面が凹凸の場合があるためローターと身体との間隔が少なくなり、接触危険があるため、姿勢を一層低くローターの回転面を確認して、行動を開始する。

2 救助対象別

(1) 自動車事故

ア 現場到着時は、周囲の状況を確認し、二次的災害の発生を予測するとともに、当該事故車両のエンジン停止、出火防止、車輪止め等による処置を実施する。

イ 高速道路上の活動は、進入、部署の基本を守り、非常灯、交通遮断を過信せず、行動の前後、左右を確認した後、行動を開始する。

ウ 破壊した後のガラスや金属の切断面等は、毛布等の保護物で覆う。

エ 降雨、降雪時並びに路面上に流出油があるとき等は、転倒に十分注意する。

オ ハイブリットカー(ガソリンエンジンと電動モーターを組み合わせ走行する機構の自動車)が事故対象の場合は、次の事項に注意して活動する。

(ア) 駆動用電池、配線等への接触による感電に十分注意する。

(イ) 事故車両から液体の漏れ等がある場合は、駆動用電池の電解液(強アルカリ性)による危険性もあるので安易に触れない。

(2) 電車、列車事故

ア 現場到着時は、まず関係者等から対向電車又は後続電車の運行停止を確認する。

イ 救助行動は、パンタグラフの降下、第三軌条方式の場合は送電の停止を確認し、動かないことを確定した後、開始する。

ウ 事故現場が踏切付近の場合は、現場付近を通過する一般車両に十分注意する。必要によっては隊員を交通整理に従事させる。

エ 救助器具の使用は、操作後のバランス、反動等の影響に配意して作動させる。

オ 軌道敷内では、玉石、レール、枕木等でのつまづきによる転倒に注意する。また、足場の不安定な場所では、必要により身体の確保を行う。

カ 橋梁の軌道敷での活動は、転落防止措置を必ずとってから行う。

キ 脱線転覆した車両に積載はしご等を活用して進入する場合は、地盤等が不安定なうえ、車体の傾き等により滑りやすいので、はしごの確保、結着を確実に行う。

(3) 昇降機事故(エレベーター・エスカレーター)

ア 活動は、機械操作室と救出階等に分断されるので、携帯無線機等により連絡体制を密にとり、意思の疎通を図った活動をする。

イ 活動の着手は、電源遮断による昇降機の上昇及び下降の防止措置をとってから行う。

ウ 昇降路及び昇降路内での活動並びに要救助者の救出時には、必ず命綱等を活用して身体の確保を行う。

エ 積荷等倒壊危険のあるものは、除去するかロープ等により固定処置後に救助活動を行う。

オ 隊員等がエレベーター等に進入するときは、定められている制限重量を超えないように配意する。

カ エレベーター等の床と階床との間に間げきがある場合は、ピット内に落下しないよう慎重に行動する。

キ エレベーター天井の救出口からの進入は、ピット内への転落の危険があるので極力避ける。止むを得ず行う場合は、十分な転落防止処置をとる。

(4) 工作機械事故

ア 工作機械等の破壊活動が振動を伴うときは、周囲の積荷の荷崩れに注意する。

イ 油脂類の付着が多い工作機械等を破壊する場合は、努めて火花を発しない資器材を使用する。

ウ 印刷機ローラー等の分解・取り外し・切断活動は、油の付着で手足がすべりやすくなっており、予想外に重い場合もあるので注意する。

エ 空気式救助器具や油圧式救助器具等を使用して、拡げ、持ち上げ等の活動を行うときは、必ず当て木を使用する。

オ 破壊により落下、転倒のおそれのあるものは、ワイヤーやロープ等で事前に確保する。

カ 工作機械類等を溶・切断するときは、鋭利又は熱を持った溶・切断部との接触による受傷に注意する。

キ 中腰、仰臥位等の姿勢の継続は、疲労が伴うので適宜交替を行う。

ク 工作機械の中には、電源遮断後であっても、プレス機械のようにその重みで作動部が突然落下する場合があるので、強固な当て木等による落下防止等を施す。

ケ 工作機械等の切断刃等の鋭利な箇所には、当て布を施す。

(5) 建物、工作物関係事故

ア 作業場所が狭い場合は、隊員同士の接触による転落やロープのからみ等による転倒危険があるので、進入隊員は必要最小限とし、資器材を整理して活動スペースを確保する。

イ 高所の蝶番等を切断する場合は、姿勢が不安定になるので椅子など確実な足場を準備するとともに防塵メガネ等により目の保護を行う。

ウ ガラス等を破壊する場合は、ガムテープ等により飛散防止措置をとるとともに割れたガラス片による受傷に注意する。

エ 窓から救出するときは、窓枠、手すり等の強度を確認し、不用意に手をかけたり、足をかけたりしない。

オ 窓外に身を乗り出して救出作業をするときなど高所においては、隊員間の連携をとるとともに命綱等による身体確保を行い転落防止を図る。

カ 狭い廊下や階段で、要救助者を担架搬送する場合は、バランスを崩し転倒したり、腰部を捻って受傷する場合があるので、隊員相互に声を掛け合うとともに足元に十分注意して搬送する。

(6) 倒壊事故

ア 建物、塀等の再倒壊や荷崩れの危険があるときは、活動隊員の退避を確認後、必要最小限の隊員で、ワイヤー、ロープ等で固定する等の措置を講ずる。その際に、わずかな振動でも倒壊することがあるので、慎重に行う。

イ 倒壊による救助活動現場は、釘の踏み抜きやガラス片、トタン板等の鋭利なものに接触して、受傷する危険があるので、活動範囲内にあるこれらのものは、排除したり、折り曲げたり、布等で被覆してから活動する。

ウ 倒壊物は、無造作に渡り歩くと、転倒、転落のおそれがある。足元の強度、安定度を確認した後、静かに体重をかける。

エ 倒壊物を破壊して排除する場合は、破壊の衝撃で、予想外の場所が崩壊するおそれがある。周囲の状況を確認しながら、徐々に破壊していく。

オ 砂ぼこり、チリ等が浮遊する場所では、目や呼吸器系を保護するため、防塵メガネ、防塵マスク等を活用する。

(7) 土砂崩れ事故

ア 活動に際しては、監視警戒員を配置し、二次崩壊の兆候を見逃さず迅速な部隊の統制を行い、安全を確保する。

イ 崩壊等の危険が予想される警戒区域等には、ロープを張り全隊員に周知徹底させ進入隊員の制限を図る。

ウ 隊員個々の判断による行動は、厳に慎み、統制のとれた行動をする。

エ 進入は、崩壊危険のない安全な場所から進入する。

オ 崩れた土砂やがれきの上は、足をとられたり、転倒するおそれがあるので、足場を安定させてから行動する。

カ 土砂を排除して救助にあたる場合は、二次崩壊の発生を十分考慮して、杭及び防水シート等で安全を確保してから活動を開始する。

キ 土砂や家屋等の残がいは、予想以上に重量があるので、排除活動にたっては、複数の隊員が協力して、正しい姿勢で行う。

(8) 墜落事故

ア 墜落事故は、活動が上下で二分する場合が多いので、進入隊員との密接な連絡体制(上下)により安全を確保する。

イ 工事現場等の低所への転落事故に際しては、周囲からの土砂崩れ防止のため車両の接近を禁止し、地上の活動隊員の制服やベニヤ板等により地盤の補強をしてから活動を開始する。

ウ 狭い階段や暗い地下室内では、隊員の転倒、転落の危険があるので、照明、とび口等を有効に活用し、安全を確保する。

エ 低所に降ろす資器材は、誤って落下させる危険があるので、確実に結着して収納袋に入れる等落下物による受傷事故を防止する。

オ 要救助者を救助するときは、確実に結着し、引き上げによる救出時は、原則として要救助者の真下に位置しない。

(9) 電気関係事故

ア 電気の遮断は、専門の電気技術者に必要な範囲すべてについて行わせる。

イ 現場付近に垂れ下がっている電線には、触れない。

ウ 高所活動における使用資器材は、ロープ等で結着し、落下防止を図る。

エ 作業者の真下での行動は、行わない。

オ 緊急を要し、止むを得ず活線のまま作業する場合は、必ず耐電衣等絶縁用保護具を着装するとともに活線部分から次の安全距離を確保すること。

(ア) 低圧(交流600V以下、直流750V以下)の場合は、1.0m以上

(イ) 高圧(交流600Vを超え7,000V以下、直流750Vを超え7,000V以下)の場合は、1.2m以上

(ウ) 特別高圧(交流、直流とも7,000Vを超えるもの)の場合は、2.0m以上

(10) 可燃性ガス事故

ア 車両の部署位置は、風上、風横とし、原則として火災警戒区域外とする。

イ 救助活動は、原則として爆発等の防止措置を講じて爆発危険がなくなった後に行う。

ウ ガス濃度の測定は、必要最小限の人員を指定する。その際、耐熱服等を着装して行う。

エ 爆発危険区域内(爆発下限界の30%超える場合)への進入は、原則として行わない。緊急で止むを得ず爆発区域内に進入する場合は、必要最小限の人員でRI防護衣等、呼吸保護器を着装し、援護注水態勢を備えた後とする。

オ わずかな火花を発しても爆発等、二次災害の発生につながるおそれがあることから、火花を発生するおそれのある機器、設備等の操作又は火花の発生するおそれのある行為をしないよう活動隊員に徹底する。

(11) 毒性ガス、酸素欠乏事故

ア 現場の確認は、酸素欠乏空気、窒素ガス等無色無臭のガスもあるので、呼吸保護器を着装しないまま、不用意にピット・槽内等ののぞき込みはしない。

イ 毒性ガス、酸欠事故現場で活動するときは、必ず呼吸保護器を着装する。

ウ 毒性ガスでないことが明らかな場合以外は、必ず毒劇物防護衣等を着装して活動する。

エ 進入は、必要最小限の人員とし、悪条件が重なり活動が制限されるため進入管理者は、隊員の適性や技量を考慮して選定し、外傷のある者、体調の悪い者は進入させない。

オ 狭い進入口から槽内に進入するときの確保ロープは、進入隊員の面体にずれ、はずれが生じないように隊員の動きにあわせて慎重に行う。

カ 槽内等では、無理な姿勢での行動が多く、足元も見えにくいので転落、転倒に注意する。

キ 危険区域内から隊員が退出した場合は、隊員の異常の有無、身体・装備に対する毒性物質の付着状況を点検する。

ク 使用した装備は、点検整備を確実に行い、毒性物質が付着した場合は、洗浄等により完全に除去する。

(12) 山岳事故

ア 山岳地の様相は、春先の急激な冷え込み、夏期の落雷、雷雨、秋期における濃霧の発生、並びに冬期の降雪、積雪、吹雪等、変化が激しく、季節及び気候に配意した服装、装備等に留意する。

イ 入山してからは、定期的に自己隊の位置をナビゲータや地図で確認し、下山時のルート及び後続隊の活動を考慮して、ケミカルライトや反射テープ等を目印に活用する。

ウ 入山口及び登山道の選定を誤ると、大幅な時間的ロスが発生し隊員の疲労が大きくなることから、正確な情報収集によるルートの選定を行う。

また、登山道の倒木、切株、浮き石、落石等の危険が予測される場所の事前把握を徹底する。

エ ガレ場の検索は落石等が多いことから、監視員を配置して、監視させる。

なお、監視員等が危険を察知した場合、警笛等を活用して伝達方法の徹底を図る。

オ ガレ場からの救出は、先行員を指定し、救出経路を確認するとともに、ザイル、エイト環、ハーネス等の資器材を有効に活用し、安全に救出する。

カ 雪崩による行方不明者の検索にあっては、二次的災害防止のため監視員等を配置し活動する。

なお、監視員等が危険を察知した場合に備え、活動隊員が早急に退避できるよう、伝達方法(音の出るものは使用禁止)の徹底を図る。

キ 担架搬送は、登山道の傾斜状況等を考慮し、適宜肩掛けシュリンゲや確保ロープ等の長さを調整して担架の動揺を防ぎ、要救助者の苦痛軽減等に配意する。

ク 立木等に支点を取ってロープにより担架や隊員を確保する場合、当該支点の強度を十分に確認して設定する。

ケ 丸太橋・木道等を通過して救出する場合は、腐食等により丸太橋等の強度が低下している場合が多いので、強度を確認してからの通過を原則とし、状況に応じて、ブリッジ線を展張して安全に救出する。

(13) 水難事故

ア 現場到着した後の資器材準備は、歩道又は空地等の安全な場所で行い、止むを得ず車両が通行する車道上等で準備する場合は、監視員や警察官の交通整理のもと安全に配意し実施する。

イ 潜水活動時には航行船、漂流物又はその他の障害物との衝突を防止するため、監視員を必ず配置する。

ウ 高所からのエントリーは水面までの高さ、水深、水中障害物の有無を確認し、安全が確認され隊長の指示があるまでは、不用意にエントリーしない。

エ 舟艇上からエントリーを行う場合は、船長の判断を最優先し、船長が危険と判断した場合は、隊長はエントリーを中止する。

オ 警戒船の配置を効率よく行い、水域の状況により警戒船が不足すると考えられる場合は、早期に応援要請するとともに、付近水域にいる他機関の船舶に対して積極的に警戒を要請し、活動区域の安全を確保する。

カ 要救助者を発見した場合は、全隊員に周知し、単独行動を取らずに要救助者を全隊員で協力して、安全、確実に要救助者を救出する。

キ 水中でのトラブルや隊員間の連絡が途絶えた場合は、全隊員を一端浮上させ、隊員の安全を確認する。

ク 急激な浮上は肺破裂の危険があるため、浮上する時は右手を頭上に上げ、水面を見上げながら旋回し、呼吸を停止することなくゆっくりと一定速度で行う。

(水防活動現場の安全基準〉

第8条 水防活動現場における安全管理について、次のとおり活動内容別に定める。

1 共通事項

(1) 水防活動は、悪条件の中、昼夜の別なく継続される。そのため、体力が消耗し、注意力も散漫になりやすいので、指揮者のもと統制のとれた行動をとる。

(2) 活動中は、適正な監視員の配置を行うとともに、不測の事態における隊員への連絡方法、避難方法を事前に徹底することにより、安全を確保する。

(3) 上流にダムがある場合は、ダム上流の降雨状況により貯水量調整のため、放水量が急増し、河川の水位が急上昇することがあるので注意する。

(4) 強風時は、屋根瓦、トタン板、樹木の折れ枝等が飛来してくるおそれがあるため、保安帽等を確実に着用するなど防護措置をとる。

(5) 車両、資器材の置き場は、破堤等の二次災害を考慮した安全な場所を選定する。

(6) 活動は、かけ声等により統一して確実に行う。

(7) 水辺における作業にあたっては、身体確保用ロープをとるとともに救命胴衣を着用する。

(8) 竹や木の切り倒しは、樹形、隣接木、地形、周囲の状況、風向、風速等を考慮した最も安全な方向を選択する。

(9) 危険箇所に対しては、ロープ等により立入禁止区域を設定する。

(10) 夜間の活動にあたっては、足場等の安全確保のため活動範囲全体の照明を行う。

2 活動別

(1) 監視警戒

ア 監視警戒等の情報収集は、必ず複数隊員で行動するとともに、随時、出向経路、到着予定時間を指揮本部に報告を行う等指揮統制下での行動をとる。

イ 装備は、保安帽を着用するとともに、照明器具、携帯無線機、水深測定棒、救命胴衣、ロープ等を携行する。

ウ 警戒中は、堤防の決壊等事態の急変に備え、常に退路を念頭に置きながら警戒を行う。

エ 堤防の法面は、滑りやすく、突風による危険もあるので、転落等に十分注意する。

オ 高潮の監視警戒は、高潮が波のうねりの高さをほとんど持続したまま内陸の屈曲部等において溢水させるので、波にのまれない安全な位置で警戒を行う。

カ 橋上での監視警戒は、高波により舟艇等が押し流され、橋に衝突したり、橋が流される等の危険があるので、退避の手段を考慮して警戒する。

(2) 水防工法

ア 車両により資器材を搬送する場合は、シート、ロープ等で確実に固定し、風等による落下を防止する。

イ スコップ、つるはし、かけや等の活動資器材を取り扱う場合は、事前に結合部や柄等の緩み、亀裂を点検するとともに、活動に際しては、周囲の隊員と連絡を取り合い、隊員同士が接触しないように、十分な安全距離を確保して実施する。

ウ 活動は、長時間におよぶ場合が多いため、必要により隊員を交替させ、疲労の軽減と規律の保持により事故の未然防止を図る。

エ 土のう等重量物の持ち上げは、腰の受傷を防ぐため、背筋を伸ばし、膝の屈伸を活用した姿勢で行う。

オ たこによる杭打ちや木材を担ぐ等複数で行う作業は、指揮者等の指示、号令に合わせて行う。

カ 控えロープの固定に利用する立木、切り株、岩石等は、その大小、根の張り具合等、荷重に対する強度を考慮して決めるとともに、努めて2か所以上を連結して使用し、荷重の分散を図る。

キ 土砂くずれ、地すべり等の二次災害発生危険を伴う水防活動現場では、高所からの全体監視、危険箇所の巡回、危険情報の収集等、二次災害の発生に備えて、厳重な監視、警戒態勢をとるとともに、隊員は、常に退路の確保に配意して活動する。

ク 破堤は、次のような前兆現象を伴って発生するので、状況の変化に十分配意して活動する。

(ア) 洗掘箇所が特に濁ったり、堤防に亀裂が生じたとき。

(イ) 法の崩れが天ばまで達しているとき。

(ウ) 漏水の量が多く、しかも濁っているとき。

(エ) 漏水に泡が混ざった状態のとき。

(3) 崖崩れ現場

ア 次の現象が現われたら、二次崩壊発生のおそれがあるので十分注意する。

(ア) 通常、湧水がない崖の途中から湧水が噴き出し又は山腹からの湧水が急激に増減し、しかもその水が濁っている。特に湧水が止まったときは、崩壊の危険が迫っているので注意する。

(イ) 降水量に変化はないが、渓流の水が急に増減した場合。特に急減した場合は、崩壊の危険が迫っているので注意する。

(ウ) 崖や山肌の岩石が崩れ落ちるとき。

(エ) 崖上に亀裂、水溜まりが生じたとき。

(オ) 崖の斜面に亀裂が生じたとき。

(カ) 家のきしむ音、木の根の切れる音、地鳴りがするとき。

(キ) 付近の井戸水が急に濁ったり、水位が増減したとき。

イ 崖くずれは、連続して崩壊が起こる可能性が十分あるので、特に周囲の状況を把握し、二次災害の防止に努める。

ウ 二次崩壊発生時の退避は、原則として横方向とし、縦方向への退避は、崩壊に巻き込まれる危険性があるので行わない。

(4) 浸水地内活動

ア 浸水地内での活動は、腰までの深さを限度とし、救命胴衣を着用する。

イ 先頭に立つ誘導員は、水深測定棒等を用い、順次足場を探りながら進む。

ウ 水深は、浅い場所であっても急激に増水することがあるので十分注意する。

エ 浸水地内には、危険物や毒劇物が流出することがあるので、水の色、臭気に注意する。

オ 排水のために開放した雨水ます、マンホール等は、転落危険があるので必要により、ロープ等で安全通路等を設定する。

カ 流れのなかでの活動は、ロープを転張し、小綱、カラビナ等により身体を確保して行動する。

キ 孤立あるいは、流された場合の救助対策として、救命ボート等を準備しておく。

ク 消防車両等により浸水地を通過する場合は、努めて道路の中央寄りを通行する。

ケ 舗装道路下での水道管事故においては、水の漏えい箇所の路面下が相当の範囲にわたり洗掘されるのが通例であり、不用意に消防車両で接近すると路面陥没により二次災害が発生するおそれがあるので、現着時の車両部署位置に留意する。

(5) 舟艇活動

ア 乗艇時、救命胴衣は必ず着装する。また、救命浮環、ロープ等の救命器具の積載を確認する。

イ 舟艇の乗降は、一度に多人数が行うと転覆につながるので、一人ひとり順序よく行う。また、岸と舟艇の両端に同時に足をかけると転落の危険があるので、特に注意する。

ウ 舟艇の中では、安定をよくするため、隊員は姿勢を低くし、片側に寄り過ぎないようにする。

エ 狭い水道等の航行は、中央より右側の通行を原則とする。

オ 航行中は、障害物、漂流物等に全隊員が注意し、衝突、転覆等しないよう配意する。

カ 方向変換する時は、波の方向、状態に注意し、真横からの風、波をまともに受けないよう機を失せずに行う。

キ 急流の場合の航行は、水流に対し直交進は避ける。

ク 要救助者を救助する場合は、できる限り救命器具を活用し、最悪の場合以外は水中に入らない。

ケ 要救助者を舟艇に引き上げる場合は、転覆防止のため、原則として船首又は船尾から行う。

コ 舟艇による輸送は、重いものを下段に積み、状況によっては、ロープ等で固定したり、不安定なものは架台を設ける等バランスがとれるよう積載して行う。

(救助用ロープ等の安全基準)

第9条 消防活動等及び訓練、演習時に際して使用する資器材のうち、救助用ロープ、小綱、カラビナ及び滑車について、次のとおり安全取扱いについて定める。

1 安全取扱いの原則

(1) 救助資器材は、適正な維持管理を行い、命数保持に努めるとともに、常に使用可能な状態にしておかなければならない。

(2) 救助資器材は、消防活動及び訓練、演習のみに使用するものとし、他の用途に使用してはならない。

(3) 救助資器材は、性能限界内で使用し、二重以上の安全措置をして使用しなければならない。

(4) 救助資器材は、使用後の点検整備を十分に行い、機能保持に努めなければならない。

(5) 救助資器材は、直ちに使用できる場所に保管しておかなければならない。

2 救助用ロープ

(1) 概要

救助用ロープは、その取扱いの適否が直接人命にかかわることから、ロープに対する正しい知識と操作技術を修得し、取扱いの適正を期さなければならない。

ア ロープの種類

(ア) 材質による分類

a 天然繊維製(藁、麻、綿)

b 合成(化学)繊維製(ナイロン、ビニロン、テトロン、クレモナ、ポリエチレン、ポリプロピレン等)

c 半合成繊維製(アセテート、ポリアセテート、プロミックス等)

d 無機繊維製(ガラス、炭素繊維)

(イ) 構成方法による分類

a より合わせロープ(三つ打ち)

b 編み組ロープ(八つ打ち、二重組打ち、無より合わせ、特殊ロープ等)

(ウ) より方による分類

Sより

Zより

画像

画像

イ 構造

三つ打ちロープ

編み組ロープ

画像

画像

三つ打ちロープ

八つ打ちロープ

画像

画像

ウ 救助用ロープの指定及び性能等

(ア) 一般救助用ロープ

a 強度、各種耐性、操作性等が優れたナイロン製で三つ打ち、Zよりのロープとする。

b 性能等

(a) 引張強度 2,900kgf

(b) 使用荷重 500kgf以内

(c) 重量(100m) 9.5kg~9.8kg

(d) 溶融点 215度

(e) 伸び率 36%以内(初荷重18kgf)

(イ) 山岳救助用ロープ

a 柔軟性に富み、凹凸の少ないナイロン製の編み組ロープとする。

b 性能等

(a) 引張強度 2,440kgf

(b) 使用荷重 400kgf以内

(c) 重量(100m) 3.1kg

(d) 溶融点 215度

(e) 伸び率 34.7%以内(初荷重18kgf)

(2) 取扱上の留意事項

ア 安全措置

(ア) 消防活動等及び訓練、演習時に使用する主ロープは、原則として、2本合わせとすること。

(イ) 複数本使用するときは、必要により色等で識別できるようにし、作業内容に応じた使い分けをすること。

イ 損傷、切損の防止

(ア) ロープには、必要以上の衝撃を与えないこと。

(イ) ロープが柱、壁、窓わく等曲折部に当たる場合は、ロープ保護布等の緩衝処置をすること。

(ウ) ロープは、熱に弱いので(溶融点215度)高温、高熱を発する場所では使用しないこと。

(エ) ロープとロープを直接摩擦させるような使い方をしないこと。

(オ) ロープは、踏みつけ又は引きずり等をしないこと。

(カ) ロープのよりが1箇所に集中し(プラスキンク)、又はよりと反対の方向に力が加わる(マイナスキンク)ような使用法はしないこと。

プラスキンク

マイナスキンク

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ウ 疲労、磨耗の防止

(ア) ロープは、むやみに高所から、投げたり落としたりしないこと。

(イ) ロープの上に重量物を置き、又は落とさない。

(ウ) ロープは、必要以上に長時間展張した状態にしておかないこと。

(エ) ロープは、同一箇所のみ磨耗するような使い方を避けること。

エ 熱、薬品等からの保護

(ア) たき火、溶断火花等熱を受けるおそれのある場所の近くでの使用は、努めて避けること。

(イ) 酸、アルカリ、油脂等との接触を避けること。

(ウ) 不必要に直射日光(紫外線)にさらさないこと。

(エ) 努めて濡らさないこと。

(3) 点検、整備

ア 点検は、次の事項について行い、異常のある場合はその状況に応じた措置をとること。

(ア) 切損箇所の有無

(イ) 型くずれ箇所の有無

(ウ) 毛羽立ち、磨耗の状況

(エ) 乾湿の状況

(オ) 異物等付着の状況

(カ) リードの伸びの状況

(キ) 端末処理の状況

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イ 整備

ロープは、配置年度を識別できるようにし、計画的に使用するとともに次の事項について整備を行い、機能及び命数保持に努めること。

(ア) 使用後は、汚物、異物等を除去すること。

(イ) 濡れた場合は、必ず乾燥させること。乾燥は、日陰で行い、直射日光及び火気等による方法はとらないこと。

(ウ) 油脂、泥土、薬品等で汚損した場合は、清水で洗浄し、十分乾燥させること。

(エ) よりは完全にもどしておくこと。

(オ) 部分的に著しく損傷した場合は、その部分を切断除去して端末処理をしておくこと。

(カ) 損傷のまま放置し、又はロープを接合して使用しないこと。

(キ) 端末処理は、次によること。

a ビニールテープをロープに強く巻きつける。

b テープの上から鋭利な刃物で垂直に切断する。

c 切断面を焼止めする。

(4) 維持管理

ア 保管及び積載

保管及び積載の要領は、ロープの機能保持と緊急使用を考慮し、次により行うこと。

(ア) 一ひろ巻きにして保管し、又は積載すること。

(イ) 積み重ね又は上部に重量物をのせないこと。

(ウ) 外傷、濡れ、むれ、ほこりの付着等からの保護処置をとること。

(エ) 完全に乾燥させたのちに行うこと。

(オ) 通風のよい冷暗所を選定すること。

(カ) 床、地面等に直接置かないこと。

(キ) 油脂、泡剤、バッテリー液(蒸気を含む。)が付着するおそれのある付近に保管、積載しないこと。

(ク) せまい場所に押し込み、ロープを変形させるような方法は避けること。

イ ロープの標示

ロープの管理と使用上の適正を期するため、次により標示すること。

色で長さ、用途、程度を識別

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ウ 点検記録

ロープの保守管理と使用の適正を期し、安全を確保するため、救助ロープ点検記録簿により記録しておくこと。

エ 廃棄

ロープは、目視により点検し、次に該当する場合は、廃棄するものとする。

(ア) ストランドの一部に切創等の損傷を受けたもの

(イ) 異常に磨耗し又は焼けが生じたもの

(ウ) 新品に比較して、リードの伸びが大きくなり、又はよりが戻って太くなったもの

(エ) ロープのつぶれ、ヤーンやストランドの浮き、型くずれが著しいもの

(オ) 落下等により強力な衝撃荷重を受け又は引張強度の約50%以上の荷重がかかったと推定されるもの

(カ) 酸、アルカリその他の薬品におかされたと推定されるもの

(キ) 全体的に磨耗し、毛羽立ちが著しいもの

(ク) その他救助用ロープとして使用するのに不適当と判断されるもの

オ 転用

消耗の程度により、良い部分を切り取って小綱又は荷重をかけない結索訓練用あるいは補助用に転用することができる。この場合、明確に標示し救助用と混用しないようにすること。

3 小綱

(1) 概要

小綱は、要救助者の結索、自己確保用命綱、担架結索、支点作成等重要かつ多目的に使用されるものであり、取扱い及び管理要領は、救助用ロープに準ずるものとする。

(2) 保管及び積載

保管し、及び積載する場合は、小綱を二つ折りにして、その両端末で二重もやい結び又は一重つなぎで結索し、5本あるいは10本を1束とするものとし、方法及び場所については救助用ロープに準じて行うこと。

4 カラビナ

(1) 概要

カラビナは、ハーケン、ハンマーとともに登山用具の一つであるが、その機能上消防活動に有効に活用できることから、これを採用したものである。

ア カラビナの種類

(ア) 形状による分類

O型

変形D型

新D型

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(イ) 安全環の作動方式による分類

ネジ式

スライド(スプリング)

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(ウ) キャッチ部の方式による分類

噛み合せ方式

ピン方式

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(エ) 材質による分類

鋼製、軽合金製

イ 構造

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ウ 救助用カラビナの指定及び性能等

(ア) 標準型カラビナ

a O型ネジ式安全環付の鋼製で、キャッチ部の噛み合せ方式のもの

b 性能等

(a) 引張強度 2,000kgf

(b) 使用荷重 400kgf以内

(c) 重量 150g

(イ) 大型カラビナ

a O型ネジ式安全環付の鋼製で、キャッチ部の噛み合せ方式のもの

b 性能等

(a) 引張強度 3,200kgf

(b) 使用荷重 600kgf以内

(c) 重量 280g

(ウ) 山岳用カラビナ

a D型ネジ式安全環付の軽合金製で、キャッチ部の噛み合せ方式のもの

b 性能等

(a) 引張強度 2,700kgf

(b) 使用荷重 500kgf以内

(c) 重量 86g

(2) 取扱上の留意事項

ア カラビナを設置するときは、必ず長径方向に荷重がかかるように設置すること。

イ 安全環は、確実に締め(かけ)ること。また、振動や摩擦により安全環がはずれるおそれがある場合は、開閉かんが下向きとなるように設定すること。

なお、安全環が完全に締まったことを確認するため、キャッチ側の安全環にかくれる部分を赤色で表示すること。

ウ 状況により、2個を同一箇所に使用する場合は、開閉かんを左右に振り分けて設定すること。

エ ロープにかける場合は、開閉かんを指で押し、ゲートを大きく開きロープを損傷させないようにすること。

オ 高所から落下させないようにすること。

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(3) 点検、整備

ア 点検

点検は、次の事項について行い、異常のある場合は、その状況に応じた措置をとること。

(ア) 変形、損傷、さび等外観上の異常の有無

(イ) 開閉かんの開放及び噛合せの状況

(ウ) 安全環の作動状況

(エ) キャッチ部の赤色表示状況

イ 整備

次の事項について整備を行い、機能及び命数保持に努めること。

(ア) 油、泥土、異物等を除去すること。

(イ) さび等を除去し、水分湿気はふきとっておくこと。

(ウ) 変形したものは、曲げ、伸ばし等により修正をしないこと。

(4) 維持管理

ア 保管及び積載

カラビナは、5個あるいは10個を1束とし、緊急使用に応じられるような方法で腐食、さび等におかされない場所に保管又は積載すること。

イ 廃棄

次に該当する場合は、廃棄する。

(ア) 全体的に変形したもの

(イ) 開閉かんのピンにガタを生じ、噛み合せ不良のもの

(ウ) 外観上変形が認められなくても、強力な衝撃荷重を受け、又は受けたと推定されるもの

(エ) 安全環が機能しなくなったもの

5 滑車

(1) 概要

滑車は、その用途により材質、大きさ、形式等各種製造されているが、繊維ロープやカラビナと組み合せて救助活動等に活用するには、小型で軽量のものが適している。

ア 構造図

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イ 性能

(ア) 引張強度 3,200kgf

(イ) 使用荷重 600kgf以内

(ウ) 重量 280g

(2) 取扱上の留意事項

ア 滑車は、索溝とロープの引張り方向を一致させ、軸に直接に荷重がかかるように設定すること。

イ 滑車に結合するカラビナは、2個並列(ダブル)とすること。

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ウ 高所から落下させないこと。

(3) 点検、整備

ア 点検

点検は、次の事項について行い、異常のある場合は、その状況に応じた措置をとること。

(ア) 変形、損傷、さび等外観上の異常の有無

(イ) 軸及び枠の磨耗、損傷の状況

(ウ) プーリの回転状況

イ 整備

次の事項について整備を行い、機能及び命数保持に努めること。

(ア) 軸部に油気をきらさない程度の注油を保つこと。

(イ) その他カラビナに準ずること。

(4) 維持、管理

ア 保管及び積載

努めてカラビナを使用して、つり下げ状態とし、緊急使用を考慮した方法及び場所に保管又は積載すること。

イ 廃棄

次に該当する場合は、廃棄する。

(ア) 著しい変形、損傷、磨耗が生じたとき。

(イ) 軸とプーリが焼き付き又はさび付いて、プーリが回転しなくなったとき。

(消防及び救助資器材の安全取扱い)

第10条 消防及び救助資器材の安全取扱いについては、当該資器材の取扱いマニュアルに定めるところによる。

(訓練、演習時の安全管理体制)

第11条 訓練、演習時における安全管理体制の基本的事項について、次のとおり定める。

(1) 訓練、演習時における安全管理の主体は、各級指揮者及び隊員とする。

(2) 安全主任者及び安全員を配置して行う訓練、演習

 高所における訓練、演習

 濃煙熱気内の訓練、演習

 その他安全管理上必要と認められる訓練、演習

(3) 安全主任者は、訓練、演習時の安全確保を図るため、警防技術指導員(救助隊長等)と連携して、次の任務を行う。

 訓練、演習計画の点検

 施設、場所等の訓練、演習環境の事前確認

 使用資器材の点検状況の確認

 安全に関する着眼事項の指導助言

 安全員の配置及び統括

 安全監視、危険要因の排除、不安全行動に対する制止等

(4) 安全員は、安全主任者の指示を受け、担当面の安全確保を行うこと。

(5) 安全主任者及び安全員は、別に定める標示を行うこと。

(6) 安全主任者及び安全員は、携帯無線機等による連絡体制を確保すること。

(7) 安全確保上の留意事項

 転落危険の伴う訓練、演習には、命綱の使用及び安全ネット、安全マット等を活用し、安全措置を図ること。

 訓練、演習時の要救助者は、原則として訓練用ダミーを活用する。ただし、これによらない場合は、十分な安全措置を行う。

 濃煙熱気内の訓練を行う場合は、安全主任者及び安全員のほか緊急時に対応するため必要な要員を配置するとともに、携帯警報器等の活用を図ること。

(安全点検基準)

第12条 訓練、演習時における安全点検の基準について、次のとおり定める。

1 計画

区分

点検要素

訓練項目

1 訓練目標は、規程、指針に基づいて選定されているか。

2 訓練目的、趣旨、重点が安全性を考慮し、明確に示されているか。

3 所属における安全教育、有識者の安全に関する助言が生かされているか。

4 過去の訓練結果から見た安全に関する検討事項を反映しているか。

5 段階的な能力向上を図るような計画であるか。

6 訓練の内容、訓練量が実施者の技量、体力に合致するか。

7 訓練中の状況変化に対応する予備計画を検討してあるか。

8 実施要領は、具体性があり、綿密に計画されているか。

9 事前における安全点検の配慮があるか。

10 安全行動の知識に関する教育を考慮しているか。

11 訓練の実施時期、時間に無理はないか。

訓練場所施設

1 場所、施設の安全性について十分把握されているか。

2 訓練目的、隊員の技量に合った場所であるか。

3 他の訓練、業務等との競合はないか。

4 安全ネット・安全マット等の安全用具について配意しているか。

2 準備

区分

点検要素

訓練場所

1 訓練場所は、隊員の障害とならないように整理整頓してあるか。

2 潜在危険のある場所を確認し、必要な処置をしたか。

3 落下・倒壊のおそれのあるものを除去したか。

4 地盤、足場等が安定しており、転倒・転落の危険性はないか。

5 転落危険場所に柵、手すり等を、また転倒危険場所に覆い等の危険防止措置をしたか。

6 訓練の内容に合った広さが確保できるか。

7 危険範囲の標示、立入り禁止の処置はしてあるか。

施設、設備

1 施設の構造に損壊、腐食、老化等の欠陥はないか。

2 施設の強度、取付状態は十分であるか。

3 機能低下、不良箇所はないか。

4 危険箇所の補強はどうか。

5 安全ネット・安全マット等の安全用具は、正しい方法で取扱われているか。

6 安全ネット・安全マット等に構造欠陥・機能低下はないか。

個人装備

1 防火衣等の服装の着装状況は、完全か。

(1) 保安帽は、頭に合い、あごひもが確実に締っているか。

(2) 防火衣等は、体に合ったものを着用しているか。

(3) 破損箇所はないか。

(4) ボタン・フック等のかけ忘れ、ベルトの締め忘れはないか。

(5) 靴ひも、ゴム長ぐつのつりひもは、適切に処理されているか。

(6) バンドの端末等の処理は良いか。

2 訓練内容で安全帯(命綱)を必要とする場合、着装又は準備しているか。

3 警笛、警報器等の非常連絡装置を持っているか。

隊員

1 健康状態(疾病、痛み、疲労)はどうか。

2 体力、能力等の個人差はどうか。

3 訓練の実施要領を把握し、その理解度はどうか。

4 適正な準備体操を行ったか。

5 安全行為の知識を持っているか。

その他

救急医薬品を準備する等、隊員の負傷時における応急救護態勢が配慮されているか。

3 実施

区分

点検要素

全般

1 訓練用資器材の取扱いは適正か。目的外使用はないか。

2 確認呼称を励行しているか。

3 冒険的な行動、安全を無視した無理な行動は見られないか。

4 作業内容に応じた広さが確保されているか。

5 高所作業等身体の不安定な場所においては、命綱を使用し、身体を確保しているか。

6 隊員個々の能力・体力に応じた訓練内容であるか。

7 制限事項・禁止事項が守られているか。

8 実施者の疲労度はどうか。

9 その他全般的な不安全状態はないか。

1 この要綱は、平成15年9月1日から施行する。

2 この要綱の制定に伴い八日市場市外三町消防組合安全管理要綱(昭和52年4月1日内規)を廃止する。

(平成18年3月24日訓令第1号)

この訓令は、平成18年3月27日から施行する。

(平成25年3月13日訓令第5号)

この訓令は、平成25年4月1日から施行する。

匝瑳市横芝光町消防組合安全管理要綱

平成15年9月1日 消防本部訓令第5号

(平成25年4月1日施行)